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「海の森」利権と石原慎太郎「3億円別荘」 〈小池が狙う「最大のターゲット」〉

 投稿者:東京新報  投稿日:2016年11月10日(木)07時34分22秒
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  「海の森」利権と石原慎太郎「3億円別荘」 〈小池が狙う「最大のターゲット」〉

混迷する五輪ボート会場「海の森」の整備は石原の提唱で始まった。石原の別荘を3億円で買い取ったとされる鹿島の関連企業は、海の森の工事を3億7千万円で指名入札により受注していた。本誌直撃に石原は、小池は「何を聞いてくるのか」と動揺――。

 十一月五日、小池百合子東京都知事(64)は、就任九十六日目にして初めての休日を取った。都政担当記者が語る。
「久しぶりに英気を養ったようです。ただ、結果を求められる時期に入ってくるが、ずっと訴えてきた東京五輪施設の見直しが、うまくいきそうにない。中でも改革の目玉だったボート・カヌー会場『海の森』の見直しは、さまざまな抵抗にあって暗礁に乗り上げています」
 海の森水上競技場――。整備費は招致段階の約六十九億円から約四百九十一億円にまで高騰。選手からも「横風が強い、騒音が大きいなどの問題があり、一流のコースは出来ない」と不満の声が上がっていた。
「五百億円を海に捨てるようなもの。素人がこの場所を選んだのでしょう」
 九月一日、海の森を視察した際、小池氏はこう言い放った。九月末には、ボート会場を宮城県登米市の「長沼ボート場」へ変更する意欲を示し、十月十五日、長沼を水上から視察するパフォーマンスを見せる。
 ところが、来日したIOCのトーマス・バッハ会長から「ルールは変えないほうがいい」と釘を刺されたことで状況は一変した。
「この日を境に、小池氏から宮城県の村井嘉浩知事に電話をかける回数は激減します。村井氏も『早いうちから長沼を外してくれたほうが助かった。結局、小池さんは“IOCに理解いただけなかった”と弁解するのだろう。職員がかわいそうだ』とこぼしていました」(宮城県政担当記者)

豊洲と同じ臨海再開発の目玉

 都庁幹部が続ける。
「築地市場の豊洲移転と同じく、海の森でも動き出した巨大プロジェクトを止める難しさを小池知事は痛感していると思います。何しろIOC、五輪組織委員会だけでなく、長年海の森の整備を推し進めてきた都議会自民党、東京都庁も見直しに反対ですから」
 都政トップの小池氏でさえ、撥(は)ね除ける“海の森利権”。そもそも、なぜこの地が会場に選ばれたのか。
「発端となったのは、石原都知事時代の“海の森プロジェクト”です」
 都庁の元幹部はそう振り返る。今から十七年前、石原慎太郎氏(84)が都知事に就任した当時、都には大きな課題があった。
「台場や有明など臨海副都心の開発がバブル崩壊で失敗に終わり、その特別会計は累積五千億円超の大赤字を抱えていました。そこで築地市場を豊洲に移転させ、跡地を高値で売却しようとしたのです」(同前)
 臨海再開発を推し進めたい石原氏が、築地の豊洲移転と並んで、力を注いだのが五輪招致活動だった。
「石原氏は臨海部に国立競技場などの競技施設を集中させる計画を持っていた。五輪招致をテコに、一気に臨海再開発を前進させようとしたのです」(同前)
 石原氏が正式に五輪招致を表明したのが、〇五年九月。この直前の七月、その後の都政に大きな影響を与える“事件”があった。議会での偽証答弁で、石原氏の懐刀、浜渦武生副知事が更迭されたのだ。主導したのは“都議会のドン”こと内田茂都議(77)である。
「内田氏は九月に石原氏の長男、伸晃氏を都連会長に据えることで、石原氏と手打ちを行います。以来、伸晃会長、内田幹事長体制は先の都知事選まで十一年続き、都政を牛耳ることになったのです」(同前)
 その過程で登場したのが、海の森プロジェクトだ。
「石原氏は五輪デザイナー総監督に建築家の安藤忠雄氏を据え、招致の目玉事業として“ゴミの島”だった中央防波堤を“海の森”に再生させる計画を掲げました。四十八万本の植樹を行い、三十年間かけて公園を整備するというこの計画を、都議会自民党も強く後押ししました」(元都港湾局幹部)
 あわせて一六年招致の立候補ファイルには、新たに整備する公園の一角に、ボートなどの会場として「海の森水上競技場」を新設することが記された。
「財務局にはカネがかかると反対する声もありましたが、内田氏ら都議会自民党が押し切った。一六年招致には敗れましたが、競技場計画は二〇年招致でも引き継がれたのです」(同前)
 整備費が乱高下してきた水上競技場の工事だけでなく、「海の森公園」の整備事業にもこれまで巨額の税金が投じられている。そこで、本誌は、海の森整備の受注企業の調査を行った。
 港区に本社を置き、造園工事などを手掛ける「かたばみ興業」という会社がある。石原都政時代の〇八年十一月に約五千六百万円、その後も一四年一月に約六千七百万円、一五年十月にはJVの筆頭企業として約二億四千八百万円で海の森公園整備工事を、いずれも指名入札で受注している。
 社名からは分かりにくいが、かたばみ興業は大手ゼネコン、鹿島建設の関連企業だ。大株主は鹿島の創業一族、鹿島昭一元社長と鹿島建設。両者で計五八%の株式を保有している。
 鹿島といえば、石原氏との太いパイプで知られる。鹿島の栗原俊記専務は石原氏の元公設秘書なのだ。
「栗原氏は鹿島に入社後すぐに休職し、石原氏の秘書になります。石原氏と同じ一橋大卒で信頼も厚く、約十五年間秘書として働いた後、鹿島に復帰。ブランクにもかかわらず、営業畑を歩み専務に上り詰めたのです」(石原氏の元秘書)
 つまり、石原氏と親密な大手ゼネコンの関連企業が海の森の公園工事を計約三億七千万円で受注しているのである。だが、両者の関係はそれだけではない。
 実は、かたばみ興業は逗子市にある石原氏の別荘を購入しているのだ。
 JR逗子駅から徒歩二十分。急勾配の坂を上がった先に見えるのが、石原氏の別荘である。約千八百平米もの広大な敷地に、コンクリート打ちっぱなしの白い建物。切り立った崖の中腹から逗子湾を望むという抜群のロケーションだ。
「石原氏が青春時代を過ごした逗子は『太陽の季節』など小説の舞台になった土地です。都知事時代も逗子の別荘にたびたび通っていた」(別の元都庁幹部)
 登記簿によれば、かたばみ興業は一四年七月にこの別荘を購入している。
「石原氏側は買い手を探していたと聞いています。眺望は抜群で、価格も土地だけで三億円を下らないでしょう。ただ、石原氏の別荘は区画整理された他の別荘地とは異なり、崖沿いの斜面に建っており、土地を分割して売ることができない。簡単に買い手が見つかる土地ではありません」(地元の不動産業者)
 その別荘を購入したのが、かたばみ興業だった。同社の取締役は、「(三億円?)それくらいです」と明かし、別の元取締役は「石原さんはご高齢ですし、いろいろ事情がありましたからね。鹿島にとって、葉山のあたりは縁のある地域ですので。(価格は)三億よりは下ですね」と語った。
 だが、売上高約二十六億円(一五年度)というかたばみ興業にとって、その一割前後にのぼる不動産投資は決して小さくない。

伸晃氏は鹿島から別荘を購入

 改めて購入の経緯をかたばみ興業に尋ねると、
「本件は事業用不動産として、価格を含め適切な取引で購入したものです。また、工事入手に関し、(石原氏との関係が有利に働いたという)事実はありません」
 鹿島建設も「適正な取引を行った旨、かたばみ興業から聞いております」と回答した。
 石原家と鹿島を巡っては、長男・伸晃経済再生相も〇七年七月、鹿島が建設した葉山町のコンドミニアムを購入。一階の一室を鹿島昭一氏が所有している。
「伸晃氏が購入したコンドミニアムは一般には売り出されなかったセレブ向けの物件。価格は約一億六千万円だったそうです」(不動産関係者。伸晃氏から回答はなかった)
 親密ぶりがうかがえる石原氏と鹿島。臨海再開発を巡っては、鹿島は複数の工事を受注している。
 豊洲新市場の工事では、一四年二月、鹿島のJVは新市場の青果棟工事を約二百五十九億円、落札率九九・九%で受注し、官製談合疑惑も囁かれた。
 海の森についても、晴海の選手村への道路「南北線」の工事を受注した。
「南北線が計画されたのは、石原都政時代の〇九年。五輪招致成功を受け、都は選手村と新国立を結ぶ環状二号線と同様、二〇年までの供用開始を目指して工事を進めています。全長二・五キロで総事業費が約一千百億円にのぼる超高額工事です」(前出・都政担当記者)
 その事業の中心である海底トンネル工事を今年四月、相次いで受注したのが、鹿島のJVだった。南北線(二号函・三号函)工事を約八十三億七千万円で、南北線(一号函)工事も約七十九億三千万円、落札率九九・三%で受注している。
「しかし、海の森と有明方面を結ぶ道路がすでに一本ある。五輪後の需要を考えると、南北線の必要性には疑問が残ります」(同前)
 石原氏同様、海の森プロジェクトを強力に推進してきたのが、地元・江東区の山崎孝明区長(73)だ。都議を五期務め、〇七年に江東区長に転じている。
「山崎氏は都議時代、内田氏の最側近でした。石原氏とも関係は良く、長男・一輝氏が都議選に初出馬した際、石原氏は決起集会にまで駆けつけ、『親父さんのように怖い、鋭い政治家になって下さい』と激励していた。次男は、鹿島に勤務しています」(自民都連幹部)
 その山崎親子は、ボートとともに海の森で競技が行われる予定のカヌーにも入れ込んできた。
「山崎氏の号令で、江東区の中学生が対象の区立カヌー部が出来ました。一輝氏も区カヌー協会会長を務めています。議会で地元選出の野党都議が海の森に批判的な質問をすると、一輝氏は『それでも江東区民か』と野次を飛ばしたりする。二人は小池氏が長沼案に傾きかけた時も、相当不満気でした」(同前)
 海の森関連工事には、山崎親子の存在も見え隠れしている。海の森公園が造成される中央防波堤埋立地の工事を山崎親子の献金企業が請け負っているのだ。
 その一例を挙げると、一四年十二月、指名入札で中央防波堤埋立地の配水本管新設工事を約三億三千万円で受注した新日本工業(江東区)。一方で、同社は一二年、一三年と続けて一輝氏が代表の「自民党東京都江東区第三十三支部」に十八万円ずつ献金している。
「江東区には五輪競技場の建設に伴う埋立地工事などが多い。特に山崎親子の支援企業には建設業者が目立つ。区が海の森など五輪事業を推し進めることで、そうした支援企業も潤うという構図です」(同前)
 自宅マンション前で山崎区長に話を聞いた。
「あなたたちの質問に答える必要ないじゃない。推測でモノを書いて」
――小池氏の会場見直しについてどう思うか。
「彼女がやりたいことをやればいいんじゃない」
 かたや一輝都議は直撃に対し、「忙しいから」と答えるばかりだった。

「あれは安藤さんだから」

 こうした石原都政時代の“負の遺産”については、小池氏も責任追及を強めていく意向だ。
「小池氏は一日の臨時会見で、豊洲の盛り土問題の質問状に対する石原氏の書面回答を『ほぼノー回答だった』と切り捨てました。『お会いするのか、書面なのか、検討していきたい』と“公開聴取”にも意欲を示しています」(前出・都政担当記者)
 小池氏が批判の矛先を向ける石原氏。海の森の混乱や小池発言を、どう考えているのか。十一月五日午後、散歩に出掛けようとする石原氏に声をかけた。
――海の森事業の経緯について、お聞きしたい。
「知らない。あれは安藤(忠雄)さんだから。安藤さんは緑化には非常に熱心だったみたいだね」
――一六年招致でも、海の森を活用しています。
「知らない。それで、豊洲はどうなりそうなの? 俺にまた質問するって筋違いじゃないかな。拒否したらどうなるの? 訴訟になるのか? (小池氏は)何も新しいことをやらないな」
――海の森の公園整備を行ったかたばみ興業は?
「そこは何をやったの? 木を植えているの?」
――そうですね。
「豊洲の質問はどんなのが来るの? 豊洲はもう一回聞いてくるの?」
――再回答を求めてくるかもしれません。都知事時代、鹿島の栗原さんとのつながりはありましたか?
「もちろんないよ。鹿島に持っていかれたんだから」
――鹿島は都の工事や石原さんが推進した事業も落札しています。
「……(無言)。海の森はお金かかるの?」
――かかります。見積もりの甘さが指摘されています。
「安藤さんがやっていたよ。海の森にしろ、何にしろ、議会にも予算はあがってきているわけだろ」
 その後、石原氏は別荘について書面でこう回答した。
「第三者を介して売買契約をした事実はありますが、買い手がみつからなくて困ったような事情はありませんでしたし、代金は三億円よりはるかに低い金額でした。自らの立場を利用して利を図るようなことは私の矜持に反するものであって、およそあり得ないことです。
 私とかたばみ興業との間に特段の関係は全くありませんし、そもそも、指名競争入札において、都知事との関係が業者の工事受注に有利に働くといったことが可能な時代ではありません。当然ながら、都知事退任後の東京都発注工事に関与する余地も一切ありません」
 一方、石原氏から名指しされた安藤氏。携帯電話を鳴らしたところ、
――海の森について、石原氏に取材したのですが。
「ちょっともう私、忙しいからそんなことええわ。はいどうもー」
 と言って電話は切れた。
 石原都知事、内田氏率いる都議会自民党、地元・江東区が一体となって推進してきた海の森プロジェクト。この強固なトライアングルに屈し、小池氏は巨額の金を海に捨ててしまうのか。

「週刊文春」2016年11月17日号


鹿島建設グループの保険代理店・造園工事施工
かたばみ興業(株)(鹿島建設グループ)



 
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